進む倉庫のロボット化―世界のロボット倉庫と物流の高速化

20世紀に「未来」として想像されていた姿が、物流の世界で実現しつつあります。物流業界で話題のロボット倉庫は、まさに考えられていた未来の姿です。ロボット倉庫の導入事例、それによって多様化する物流業の新しい形をご紹介します。

進化を続ける自動倉庫―ロボットが倉庫を管理

「自動で指定の場所まで荷を運んで格納し、今度は別の場所から自動で荷を出してくる」

アニメでは近未来として描かれるようなテクノロジーを凝縮した倉庫、それが自動倉庫です。実は、自動倉庫が誕生したのは意外にも早く、1960年台にはすでに初期の自動倉庫と言えるものが稼働していました。初期の自動倉庫はコンベヤによる搬送がメインでしたが、そこから目覚ましい発展を遂げていくことになります。有軌道台車による搬送やパレットを格納する3次元のパレタイズ装置などが登場し、まさに近未来的な姿へと進化してきたのです。

こうした進化は、高速かつ大量保管、パレット単位での管理を自動化することが目標だったといえるでしょう。しかし、大量生産・大量消費の時代は終わりを告げ、細分化したニーズへの小ロット生産での対応へと考え方がシフトし、より小さな単位での管理が求められるようになりました。

これと同時に、自動倉庫に求められるものも変わったのです。ミクロな管理にはケース単位のピッキング作業が必須ですが、ここには人の手が必要になるために、ケースピッキングがメインの倉庫では自動化が難しく、課題とされてきました。

近年、さまざまな技術が複合的に結びつき、この課題を解決できる自動倉庫が登場しました。それがロボット倉庫です。ロボットがケース単位でのピッキング作業を行い、高密度格納と自動化を実現したのです。このロボット倉庫により、課題とされてきた少単位管理も可能になり、倉庫の無人化・全自動化に大きく近づきました。

ロボット倉庫はここまできた―ロボット倉庫3事例

すでに日本国内でもロボット倉庫が活躍しています。稼働中の代表的なロボット倉庫をご紹介します。

日本国内に初導入されたロボット倉庫
「Amazon Robotics(アマゾンロボティクス)」

世界最大級のインターネット通販サイトAmazonは、日本国内各地に驚くべき速さで購入した商品を届けてくれます。その速さを実現するための一端を担っているのが、徹底した在庫管理と究極にまで効率化された倉庫管理です。

アマゾン川崎FC(フルフィルメントセンター)は、そんなAmazonの多品種かつ膨大な在庫を管理するため、国内13番目の拠点として2016年にオープンしました。そしてそこに導入されたのが、「Amazon Robotics(アマゾン ロボティクス)」です。従来のピッキング作業は、作業者が該当する棚の場所まで移動し、商品をピックアップしていました。しかし、アマゾン川崎FCでは移動するのは人ではありません。ロボットが棚を持って人のところまでやってくるのです。これにより人はほとんど移動する必要がなく、効率的に入出庫ができます。

ラックを背負ってロボットが移動
「Butler(バトラー)」

Amazonと同等か、それ以上にロボット倉庫について注目を集めているのが、インテリア小売業大手のニトリです。ニトリは西日本と東日本に物流拠点を持ち、それぞれにロボット倉庫を導入しています。

西日本の物流拠点となるのが、大阪府茨木市にある西日本通販発送センターです。ここには自動搬送ロボット「Butler(バトラー)」が導入されています。バトラーが採用する仕組みは、Amazon Roboticsと同じようにラックを背負ってロボットが移動するというもの。ニトリの物流子会社であるホームロジスティクス社は、バトラーの導入により、人がピッキング作業を行っていたのに比べ、4.2倍の効率を達成したと発表しています。

バトラーを開発したのは、もともとはインドの企業で現在はシンガポールに本社を置く「GreyOrange(グレイオレンジ)」社です。世界中でバトラーの利用は増え、日本国内でも数社が導入し100台以上が稼働、ラックを背負って倉庫の中を動き回っています。このバトラーは、次に紹介するオートストアに比べると格納密度が低く、床精度が必要という課題があります。しかし、対応できる荷サイズの幅が広く、拡張性が高いという点で有利です。

ラックの上をロボットが縦横無尽に
「AutoStore(オートストア)」

ニトリの西日本通販発送センターにバトラーが導入された一方で、東日本の物流拠点、神奈川県川崎市の東日本通販発送センターには別のロボット倉庫が導入されました。それが「AutoStore(オートストア)」です。

オートストアはAmazon Roboticsやバトラーとは全く構造が異なります。格子状に組まれたグリッドと呼ばれるレールの上を、複数のロボットが縦横無尽に移動します。グリッドの下にはコンテナがぎっしり積まれていて、これをロボットが釣り上げて搬送する仕組みです。

オートストアはノルウェーのAutoStore AS社が開発し、日本国内では岡村製作所が発売しています。ニトリの東日本通販発送センターのほか、コープさっぽろの江別ドライセットセンターにも導入されています。こちらはコンテナを隙間なく詰め込むことができるため、バトラーに比べ高密度の保管ができます。また、ラックを移動させるのではなくコンテナを抱えるようにレール上を移動するため、高速搬送が可能です。ただし、グリッド上を移動するという構造上、格納場所を増やすには拡張工事が必要となります。

ロボット倉庫の課題と新たなビジネスモデル

こうしたロボット倉庫の導入は、ご紹介したアマゾンやニトリといった取扱商品の種類・量ともに膨大な大企業であればこそ可能といえます。しかし、取扱品目や流通量の多くない企業では、自社でロボット倉庫を導入し運用するのは多額な投資が必要であり、現実的ではありません。物流業界の大半を占めるのは、そのような中小企業です。ロボット倉庫の導入が不可能な中小企業は、人手不足を解消できないままになってしまうのでしょうか。

このような物流業界の課題を解決する手段として、荷主とロボット倉庫を結ぶサービスが登場しています。荷主は効率化へのメリットが多くあるロボット倉庫を持つ企業に物流業務を委託することで、人手不足を少しでも解消することが可能です。一方、ロボット倉庫を持つ物流会社も倉庫稼働率を安定させることで、ロボット倉庫のコストについて採算性を維持できます。このようにロボット倉庫は、物流業界の中にも新たなビジネスモデルも生み出しているのです。

ロボット倉庫はさらに進化していく

自動倉庫の進化系ともいえるロボット倉庫について、その特徴や導入事例をご紹介しました。ロボット倉庫の導入・稼働は始まったばかりです。ロジスティクス、ロボティクス双方の観点から、それらに関連する企業が開発を進めています。自動で流通量の多い商品を搬入搬出しやすい場所に置くような、AIを搭載し学習する倉庫も登場するかもしれません。ロボットが管理する自動倉庫は、まだまだ進化を続けていくと予想されます。 

参考:

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