ドライバー不足解消へ!自動運転の実用化に向けた取り組み

物流業界の人手不足問題を解消する方法として注目されるのが、トラックの自動運転による運送の効率化です。人手不足が深刻化している背景を見つめながら、自動運転の実現に向けた国内の取り組み、開発の動向を見てみましょう。

物流業界の現状

自動運転技術への期待が高まる背景には、物流業界を取り巻く環境がかつてなく厳しくなっていることがあります。最初に、物流業界の現状を見てみましょう。

深刻な労働者不足

どの分野においても労働者不足の問題が表面化するなか、物流業界、特に運送業の労働者不足は深刻です。

国土交通政策研究所の調査によると、全職業の有効求人倍率は、リーマンショック後0.42まで急落したものの、2013年には0.87まで回復しています。ただし、これでもリーマンショック以前の最高値1.02よりは下回る数値です。これは企業の求人に対して、求職者の人数が多いことを意味します。

ここで自動車運転の職業を見てみると、リーマンショック後に0.72まで落ち込み、その後急激な上昇を見せています。2013年に1.69まで達し、リーマンショック以前の最高値1.56を上回る数値となりました。ここから、自動車運転の職業では、求職者数に対して、企業の求人が非常に多いことがわかります。

なぜ自動車運転の職業では極端に求人が多く、求職者が少ないのでしょうか。その要因として、自動車運転の職業の有効求職者、つまり運転の仕事を求めている人の数が激減していることが挙げられます。企業は募集しているのに、運転業務に就きたい人が年々減っているのです。

運送業に冷たい風

このように人材不足が深刻化する運送業界ですが、問題はそれだけではありません。次のような問題が冷たい風となって吹き付けているのです。

  • トラック積載効率低下
    国土交通省総合政策局情報政策本部「自動車統計輸送年報」によると、営業用トラックの積載効率は年々低下しています。2010年に一度大きく落ち込み、翌年多少回復したもののそこから低下し続け、2016年には積載効率40%まで下がっています。これは、納品条件や納品時間の指定など、納品先からの要望が厳しくなっていることと同時に、荷主からの仕事量の増減も影響していると考えられます。

  • 年々増加傾向にある取扱個数
    積載効率は低下する一方で、取扱個数は増加傾向にあります。全日本トラック協会の資料では、小量物品の取扱個数は年々増加していることが報告されています。2007年には約80億個だった取扱個数が、2016年に約92億個にまで増加しています。このように小さな荷物を大量に取り扱うことになっている状況も、運送業の大きな負担になっています。

  • 急増した事業者数による低利益
    全日本トラック協会の同資料では、運送業者の増加についても触れられています。1990年に貨物自動車運送事業法が施行され、運送事業参入の規制が緩和されました。そこから2007年まで事業者数は増加の一途をたどり、ほぼ横ばいの推移を見せています(2015年データ時点)。増加した割合は実に1.5倍以上であり、事業者が増えたことにより、一社あたりが請け負う仕事量は減少し、低利益化を招いてしまっているのです。

  • 労働環境のマイナスイメージ
    労働者不足に追い打ちをかけているのが、運送業のみならず、物流業界全体のマイナスイメージです。国土交通省によってまとめられた資料では、大学生から見た物流業界のプラスイメージ・マイナスイメージを報告しています。「人の役に立つ」「社会貢献・環境への取り組み」についてはプラスイメージも大きいものの、「休日・休暇・労働時間」についてはマイナスイメージを持つ人が25%を超えています。

こうした数々の問題が複合的に影響し、物流業界全体、そして運送業の人手不足を招いているのです。

人手不足解消に期待が高まる自動運転

物流業界でも特に深刻といわれる問題が、運送業のドライバー不足ですが、この解消に直結すると期待されているのが自動運転です。国・企業が協力して自動運転の実現に向けて開発が進んでいます。

国土交通省も本腰を入れ、実現に向けたロードマップを発表しました。自動運転を五つのレベルに分け、段階的に実証を繰り返しながら実現していく方針です。

レベル1とレベル2はドライバーによる監視が必要で、特定条件下のみでの自動運転機能としています。レベル3になると、条件付きではあるものの、システムがすべての運転タスクを実施する「自動パイロット」と呼ばれる段階になります。レベル4では特定条件下における完全自動運転、限定地域での無人自動車運転が目標です。さらにレベル5では、高速道路での完全自動運転の実現を設定しています。

レベル3とレベル4は2020年、レベル5は2025年を目処として実現を目指し、2020年には自動運転に関する法整備も進めるとしています。

自動運転の実現に向けた開発状況

日本国内だけでなく、世界の企業が自動運転の実現に向け開発を進めています。

三菱ふそうのCACC技術

三菱ふそうトラック・バス株式会社を含む複数業者が共同で開発を進めているのが、CACC(協調型車間距離維持支援システム)技術です。車間通信システムにより車間距離を一定に保ち、隊列走行を実現する技術で、実証実験も行われています。

日野自動車は新会社を設立し実証実験

日野自動車は新会社「NEXT Logistics Japan株式会社」を設立し、自動運転を含めた物流の課題解決に取り組む方針です。より高効率で大量輸送が可能な隊列走行やロードトレインの実現に向けて、積極的に開発を進めています。

国際協力のもと世界各社が開発中

2017年6月にイタリアで開催されたG7では、自動運転の実現に向けた国際協力が提案されました。自動運転と物流の効率化は、日本国内だけの問題ではないのです。

メルセデス・ベンツで知られるダイムラーは「Future Truck 2025」と名付けた、近未来的な自動運転システム搭載トラックを発表しました。ドライバーの疲労をできる限り軽減する工夫が施され、自動運転中はラグジュアリーな空間でリラックスした姿勢をとることができるよう設計されています。

UDトラックスは、レベル4の実用化を目指すと発表しています。ドライバーが車内にいることを前提としたレベル3ではメリットが少ないという考えのもと、運送業の課題に取り組む姿勢です。すでに同社では、レベル4に対応した自動運転車両を発表しています。

トラックメーカーではなく、システム開発企業も自動運転の実現に取り組んでいます。それがサンフランシスコに拠点を構えるEmbarkです。Embarkは自動運転トラックでアメリカ横断に成功するという、自動運転技術における快挙を成し遂げました。アメリカ西海岸から東海岸まで、約3,900kmの距離を自動運転で無事に走破したのです。

走るのには5日間かかったのですが、休憩の必要がないドライバーレスの完全自動運転が確立すれば、2日間で走破可能とのことです。このように、自動運転は世界各国の企業で開発が進められ、国もそれを後押ししています。物流業界に大きな変革が訪れる日は近いかもしれません。

物流業界からの期待が高まる自動運転

物流業界が抱える課題と、その解消が期待される自動運転についてご紹介しました。自動運転による物流が実現する日はすぐそこまで来ているといえるのかもしれません。物流業界に大きなメリットが有るのは、レベル4からといわれており、ロードマップ2017によると、2020年には限定地域での無人自動運転のサービス開始を目標としています。物流業界の人手不足解消、トラックドライバーの労働環境改善に向け、自動運転技術の開発が加速しています。

参考:

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